「栄養教諭」という夢を実現するために
この春本学は第6期生を送り出しました。本学学生の多くは病院や社会福祉施設、自治体などの管理栄養士を目指していますが、学校に配属される栄養教諭を目標に日々学修に励んでいる学生もいます。今回は栄養教諭養成課程をご紹介します。
◇管理栄養士の活躍する職域の1つとして
近年学校教育では食育が盛んになっており、栄養教諭が小・中学校等に配置されるようになってきています。本学で取得可能な栄養教諭1種免許状は、栄養教諭養成課程を履修し、かつ管理栄養士の免許を取得した者、もしくは管理栄養士養成課程を修了し栄養士の免許を取得した者に与えられるものです。本学では、管理栄養士の活躍する職域の1つとして栄養教諭を位置づけ、管理栄養士とともに、栄養教諭の養成を行っています。なお、管理栄養士国家試験受験資格、栄養教諭の免許が取得できる大学は県内では本学が唯一となっています。
◇「自校給食」に力を入れている置賜の地で学ぶ
他の教員免許と同様に、栄養教諭も教育実習があります。この栄養教育実習は栄養教諭が配置されている学校で実施することになっています。幸い本学がある米沢市をはじめ、置賜地区では、「自校給食」(給食センター方式ではなく、学校に調理施設を設け、給食を行っている)に力が入れられており、毎年米沢市や川西町、高畠町の各教育委員会や各学校のご厚意、ご協力で教育実習を実施させていただいております。また、実習前の学校見学や各種ボランティア活動、「教職実践演習」等でも地域の皆さまには大変お世話になっております。
置賜には、「為せば成る~」や「かてもの」といった上杉鷹山の教えをはじめ、食育に使える話題や食材が豊富にあります。地産地消や持続可能な開発目標(SDGs)が重視される現代において、この置賜の地で栄養教諭を養成することには大きな意義があると考えています。
◇即戦力になる教員を目標に
栄養教諭の職務は、給食時や教科等における「食に関する指導」(食育)と「学校給食の管理」が大きな柱となっていますが、教職免許法上、栄養教育実習は「食に関する指導」に関する実習(1単位)だけでもよいことになっています。しかし、本学では、「食に関する指導」と「学校給食の管理」は本来一体的に展開すべきものとの観点から、実習でも「学校給食の管理」も経験したほうがよいと考えられること、学校教育や教職を理解するという点で1単位(1週間)では少ないのでは、という地域の先生方の強い声があったことなどから2単位(2週間)としています。
また、実習指導でも、「食に関する指導」の模擬授業や、実際に給食献立を立案し、調理・試食を行うなど、実習での学びを促進する実践的な活動に力を入れています。
これらの活動はいずれも、即戦力になる教員を目指して行われているものです。本学の学生の特徴として、特に真面目さや実直さがあげられますが、それだけに実習指導や2週間の実習を通しての学生の成長ぶりには目を見張るものがあります。学生たちは本学教職課程の願いに十分応えてくれていると考えています。
◇夢の実現のために
栄養教諭の学校配置については、自治体によって進んでいるところとそうでないところがあり、教員採用試験も、山形県をはじめ、全国的にかなりの高倍率になっています。
そのようななか、本学でも少しずつですが、教員として正式採用される者が出てきています。多くが講師等の経験を経た上での採用ですが、卒業後1~数年という、長い時間をかけて夢を実現しようとする卒業生の熱い思いや粘り強さには本当に頭が下がります。
その一方で、近年管理栄養士の職域は拡大し、全国的にみれば、就職の機会にも恵まれていることもあって、教員免許を取得しても教職の道を選択しない学生が少なくありません。実習等で学生が見せる教育者としての成長ぶりを考えると、有能な人材が流出していることにもなりますので、卒業生を送り出す側としては大変複雑な思いです。
子どもの成長・発達をはじめ、学校教育における食育や学校給食の意義について異論を挟む方はいらっしゃらないでしょう。その中心となる栄養教諭の学校への配置が今後より一層進むことを願ってやみません。
※本内容は2023年4月時点のものです。